拝啓、ノースポイントより

エースコンバットを自由研究するブログ

灯台戦争全史 1 開戦

はじめに

灯台戦争。

またの名を第二次大陸戦争。

エースコンバット7」では、オーシア国防空軍の一介の兵士"トリガー"の目線でこの戦争を描いている。

これは初見だと、今作は誰が何をしたかった戦争なのかがイマイチ不明瞭というか、複雑怪奇過ぎて何がなんだかよくわからんってのが正直なとこだったりする。

例えば、ストレンジリアル2016年のエ・エ戦争やら2020年のオーレリア×レサス戦争だったら「首都を取り戻すぜ!愛する母国の為に頑張るぜ!」と一発で言える。

「04」だったら「打倒、悪の帝国エルジア」だし、「5」だったら「平和!PEACE!あとベルカの核兵器は許さん」みたいなもんだ。

「ZERO」だったらとにかく「俺最強傭兵だからとにかく敵エースみんな墜とす」くらいなもんで大分わかりやすい。

しかし、今作では何をモチベの元として戦うべきなのか、何を目指すべきなのかがよくわからん。

そもそも、作中に出てくる連中は、何でみんな揃いも揃って軌道エレベータを巡って血気盛んに争ってるのか。

なぜこの期に及んで、敗戦国エルジアは性懲りも無く世界に喧嘩を売ったのか。

一体トリガーは何の為に戦って何を護ったのか。そして何を得たのか。

 

 

ぶっちゃけ、十ナンボ年くらいエスコンを続けてきたファンにとっても色々と意味不明というだいぶヤバイ戦争だったりする。

てな訳で、今回は灯台戦争についての疑問点を解消するべく、無駄に長々と詳しく語りまくる事を計画してみた。

今回は開戦に至るまでの背景、開戦と同時攻撃までについて書いていきたい。

 

第二次大陸戦争または灯台戦争

第二次大陸戦争(Continental War Ⅱ)または灯台戦争(Light house War)とは、2019年5月15日から2019年12月1日にかけて、"IUN(International United Nation)"に対して、エルジア王国が開戦し、ユージア大陸全土を巻き込んで繰り広げられた戦争である。

本戦争は、"IUN対エルジア"という"国際連合対国家"という戦争から、戦争終盤からは"有志連合"対"エルジア一部過激派勢力"という国家ならざるものらによる争いへと移り変わっていく。

後世において本戦争は、大陸全土を巻き込んだことから「第二次大陸戦争」と呼ばれる他、軌道エレベーター”ISEV”(International Space EleVator)を巡って争ったことから「灯台戦争」とも呼ばれる。

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第二次大陸戦争または灯台戦争

  • 戦争:第二次大陸戦or灯台戦争(めんどくさいので灯台戦争で統一)
  • 年月日:2019年5月15日-2019年12月1日
  • 場所:ユージア大陸
  • 結果:有志連合の勝利(IUN停戦監視軍とエルジア一部勢力による連合の勝利。エルジア急進派は敗北する。以後エルジアは北部愛国主義者と元併合国らの独立勢力に分離、紛争状態に突入。IUNはユージア各国軍を傘下に入れて再編成、今後大陸各地に派遣を予定)

 

 

開戦の背景

ユージアとエルジアの関係性

元々、ユージア大陸ではエルジア共和国/王国は嫌われ者であった。

これは、エルジアだけが大陸内でやたら突出して国力が強大である事、そして周辺各国を侵略併合(シラージ、ボスルージなど)しまくっていた歴史があるからだ。

ユージア各国はその歴史の中で、FCU(中央ユージア連合なる小国群で作られた国家)、大陸諸国間経済同盟、UTO(中央ユージア条約機構)、ISAF(独立国家連合軍)などと言った様々な繋がりを作ってきたが、そのことごとくからエルジアだけはハブられ続けて来た*1

この事から、エルジアはユージア大陸各国からの嫌われ者だったぽいのである。

1999年、巨大隕石ユリシーズによる災害が発生すると更にそれは顕著となる。

隕石災害で発生した大量の難民を、ユージア各国は無責任にも一方的にエルジアへと押し付ける。

このイジメやら嫌がらせやらの類にも等しい無責任な難民押し付け行為に反発し、エルジアは遂にキレる。

第一次大陸戦争(2003年-2005年)を開戦してユージア大陸中の国家、その全てに喧嘩を売った訳だが、それに対して全てのユージア各国がISAFの名の下に結ばれるようになり、最終的にエルジアは打ち倒されるという結末に至った。

エルジアはそれはもうボコボコにされ、酷い目にあったのであった。

近現代のユージア大陸は、エルジアという悪者をハブにして纏まっているようなものだったのである。

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隕石は降ってくる、連合軍は攻めてくる、エルジア悲劇と恐怖の首都「ファーバンティ」。あれもこれも全てエルジアの国力が中途半端に高いのが悪い。


 

エルジアの不満、オーシアによる軍事的支配体制

エルジアの国土や国民は、隕石災害やら大挙して押し寄せる難民の大群やら、トドメの敗戦やらによって、それはもうメタメタに打ちのめされていた。

そこで敗戦後、連合軍の監視下におかれたエルジアは、三年間の暫定政府期間を経た後、急速な復興を目指すべく共和制を廃して王政復古を行うのだった。

敗戦国エルジア共和国は、エルジア王国として生まれ変わることを目指した。

彼らは身も心も、そして政治体制も切り替わって、輝かしい未来を掴むべく再び頑張ろうというのだ。

そんな訳で、エルジアが自国の復興に注力していた期間、つまり彼らが戦争を遂行する力を失っていた約15年近くに渡り、なんかエルジア残党軍が暴れ出したりする事件を除けば、ユージア大陸には概ね平和な日々が過ぎていったそうな。

ちなみに、この期間、平和なユージアを維持するべく活動していた"IUN(International  United Nation)"と呼ばれる国際組織が存在する。

IUNは、戦後では主にエルジアが割譲した領土の信託統治などを行っていた。

それ以外にも、平和維持のためのエルジアに対する軍事力(抑止力)として、各国の軍隊を招集した下部組織、国際停戦監視軍"IUN-PKF(International UNion -Peace Keeping Forces)"を大陸各地に駐留させている。

IUN国際停戦監視軍の目的は治安維持であり、平和履行を監視することにある。つまり、エルジアがまたロクでも無い事をやらかさないかを見張るわけだ。

ところで、そんなIUN国際停戦監視軍(以外、IUN-PKF)を構成する軍事力の中に、一際大きな影響力と数をほこる勢力がいた。

その勢力、名をオーシア国防軍という。

ユージア大陸の西の海の向こうにある覇権国家、オーシア連邦共和国の有する最強の軍隊である。

環太平洋戦争*2以後、迷惑な事に「世界に平和を輸出するのが自らの使命」だと勘違いするようになったオーシア連邦共和国は、全くの善意から、世界各地に自らの軍を駐留させようと考えだす。さながら世界警察である。

そしてある日、オーシアはユージア大陸へと「平和を輸出する」には、IUN国際停戦監視軍を口実に使うのが最適である事に気付いてしまうのであった。

これにより、ユージア大陸の平和を護っていた様々な国家の寄り合い所帯=「ユージアにおけるIUN-PKF」は、いつのまにやらその大部分や、意志までもをオーシア人に侵食されていくことになる。

ユージア大陸各国にとって元々オーシア連邦は海の向こうの第三国、つまり部外者であったにも関わらず、気付けば2019年には、IUN国際停戦監視軍はオーシア国防軍がその大多数を占める事となり「平和維持活動を傘に着た」「実質的なオーシア連邦の海外遠征軍」へと様変わりしていたのだった。

そして、彼らは平和履行を監視すると同時に平和を維持する為の活動をせねばならない。

平和へのための抑止力たるには、その威容、そして実力を全世界に知らしめなければならないのだ。

そのため、駐留先のユージア大陸において、威圧的な軍事演習が行われる事となる。

それによって、超軍事大国の威容がユージア各国へと喧伝されていく。

そして当然"武装平和の仮想敵国"であるエルジアにとってもそれは例外では無かった。

武器を振り回され、威圧される「仮想敵国」の気持ちがいかほどのものか、考えるまでもないだろう。

当然エルジアは、この様なオーシアによる世界各地への駐屯に対し「オーシアによる支配の象徴」だとして猛烈に批判、反発したのだった。

ちなみに、実はこのオーシア軍によるユージア大陸各地への駐留や軍事演習というのは、中立国や友好国にとっても、あまり好ましいものではなかった面もあるらしい*3

確かに、エルジアヘのカウンターとしてのオーシアという用心棒は、エルジアに脅かされてきた過去を持つ大陸各国にとっては頼もしいものではある。

が、他国の軍隊が自分達の近くで、我が物顔でのさばっているというのはやっぱり気持ち良いものでは無いだろうし、威圧的な軍事演習は恐ろしくもあったのかもしれない。

のちのち、エルジアはこのくすぶっていたユージア世論におけるオーシアに対する悪感情を焚きつけ、そして戦争に利用する事になる。

本項ではそれについては割愛する。

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2019年5月30日、両面作戦(Operation:Dual Wielder)へと赴くIUN-PKF航空部隊。有事の際にはこのようにして大陸各地の基地から戦力が集まって即応する。

 

 

エルジアの不満、オーシアの軌道エレベータ開発計画と搾取体制

オーシアは、ユージア大陸における1999年の隕石災害や、その後に続く戦災に心を痛め、全くの善意から人々を助けてやりたいと考えていた。

はじめ、単に資金や物資を援助していたのだが、しかしそれではキリが無い事に気付く。

そこで、元オーシア大統領ビンセント・ハーリングが考えたのは、軌道エレベータ建設という国際的なビッグプロジェクトだったのだ。

初期投資自体はオーシアが行なったが、その後の投資や、労働力はユージアの人々によって賄われる。

軌道エレベータ建設によって、労働賃金や、得られた知見や技術ノウハウはユージア各国へと還元される。

そして、それらは将来に渡って彼らの故郷復興の役に立つと目されていた。

広大なアースポートの建設現場では各シフトに1万人ほどが従事している。ユージア各地から短期就労ビザで受け入れられた派遣労働者たちだ。彼らはここで2週間のVR教育を受け、2か月間働き、最先端の建築施工技術の知見と割の良い給料を受け取って本国に帰る。この施設だけで延べ100万人のユージア人が建設に携わることになり、彼らの経験はユージア各地での復興に反映されていく。

(参照:メードインユージア)

出展:OUR SCIENCE August 21,2018 特集 ユージア復興:軌道エレベータ完成間近

♯1 "OUR SCIENCE" Topic|COLUMN|エースコンバット7 スカイズ・アンノウン|バンダイナムコエンターテインメント

また、軌道エレベータは将来的には世界最大規模の太陽光発電所にもなる。

ISEVはユージア各国を支える、公平かつ恒久的なエネルギー源となると見込まれていたのだ。

これら公共投資先として、膨大な労働者を受け止める雇用創出の場として、技術を伝える教育の場として、大陸の抱えるエネルギー問題を解決する手段として、隕石災害や戦災で疲弊したユージアにとって、オーシアのもたらした軌道エレベータはまさに夢と希望の宝箱以外のなにものでもなかった。

しかし、これらについてエルジアは「オーシアによる搾取の象徴である」として、このISEVによってユージア全体へと影響を及ぼす本体勢を批判している*4

少なくとも、この軌道エレベータによって、エルジアが経済的に損害を被っている旨の発言が為されていた。

また、エルジアが軌道エレベータに反対するのはそれだけでは無かった。

ISEV防衛の為のIUN軍及び、それらが有する二機の化け物鳥とその子分達の存在である。

そもそも、起動エレベータは巨大かつ、その構造上攻撃に対しては酷く脆弱だ。

よって、IUNによってテロ対策を名目とした最新鋭の防衛システムが構築された。

この防衛システムこそが、IUN、オーシア主導の"リバティ"と"ジャスティス"なる二機の無人航空母機"アーセナルバード"の開発、そして運用である。

また、それらの補給基地として、IUNによって元々は航空宇宙基地だった"タイラー島"への大整備と拡張工事が成されている。

奇しくも以上のISEV防衛の為の施策、これら全ては、エルジアの首都"ファーバンティ"、その目と鼻の先で行われている。

得体のしれない新兵器に加えて、巨大なIUNの軍事基地が首都の目の前に現れるのだ。

これらによって、当然エルジアはエレベータ開発へとますます強く反対する様になっていく。オーシアとIUNに対する悪感情を増大させていくのであった。

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「International Space EleVator」国際軌道エレベーター”ISEV”。本来ユージア復興の為のエレベーターは大陸利権の象徴と化し、戦争と混乱を招くこととなる。

 

エルジアの不満爆発、主戦派たる若手将校らの台頭

この様に、オーシアによるユージア大陸諸国への"善意による援助"、その全てがエルジアの目には、威圧または挑発的行動に映って見えた。

実際問題、首都の目の前におけるタイラー島の拡張工事だけに留まらず、アーセナルバードの周回航路にはエルジアの領空どころか領土の真上を通過する箇所も存在した。

停戦監視の名目でIUNの監視下にあるという理屈ですら気にくわないのに、これを利用して、巨大な火薬庫が自分達の真上を悠々と飛んで行くなど、エルジア国民からすれば冗談では無い。

また、共和国時代とを比較すると国土の四割を失い、国力も軍事力も低下し、"ユージア大陸での影響力"を大いに失いつつあったエルジアに反比例して、元々部外者だった筈のオーシアの"それ"は、元々オーシアそのものが軍事大国である事を加味しても、IUNを利用し余りにも他所様の大陸で行使する強権は余りにも大きいものがある。

これらによって当然、エルジアの不満は高まって行き、そしてそれは遂に弾ける事となる。

「オーシアの支配からの脱却」をスローガンとして、エルジア軍若手将校らは立ち上がる。エルジアは開戦へと至ったのだ。

エルジア憂国の志士達は、大陸からオーシアを追い出し、大陸覇権を握っていた頃の強くて偉大なる母国を取り戻す日が来る事を望んでいる。

叶わぬ願いではあるのだが。

 

開戦

宣戦布告

灯台戦争または第二次大陸戦争はエルジアによる宣戦布告、その直後の攻撃によってはじまった。

無人機をエルジア船籍商船用コンテナに隠し、オーシア連邦共和国本土の主要軍港や、ユージア大陸IUNの軍港を爆撃する。

主に空母がその標的となり、この一連の攻撃だけでも、空母アルバトロスが撃沈せしめられ、偽装途中だった新鋭空母アドミラル・アンダーセンがドック内で被弾着底した他、多数の海軍艦艇が損害を被ったとされる。

またこれと並行してエルジア軍は、ユージア大陸中央南部のガンター湾に聳え立つ軌道エレベータと、その守りであるアーセナルバード"リバティ"と"ジャスティス"、その支援基地のタイラー島を接収する。

これらの行動は、空海の両面においてオーシアの航空戦力をシャットアウトするのが狙いであり*5

以後、オーシア軍は戦争中盤までは「本土から援軍を得られぬままにIUN-PKFの限られた戦力を、なんとかやり繰りして戦争を遂行する」羽目になる。

この間にも、エルジアの有人爆撃部隊によってIUN各基地に対しての攻撃が為されたほか、エルジア陸軍による東進が開始された。

これらエルジアの攻撃への報復として、オーシア軍は残存していた空母"ケストレルⅡ"を、すぐさまエルジア王国首都ファーバンティへの直接航空攻撃へと派遣するが、有効な打撃を与える事はなく作戦は失敗に終わった。

更に悪い事に、ケストレルⅡ航空隊の攻撃により、エルジア市民に多数の被害が発生。

これは後々、国際世論の反感を買うこととなる。

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開戦とほぼ同時にエルジアの爆撃に見舞われるフォートグレイス島。空母”アルバトロス”は被弾炎上し、活躍する間もなく歴史の表舞台からその姿を消す。ちなみにこの基地への攻撃は有人機部隊が担当した。

 

クリーンな戦争と宣伝戦

エルジアの無人機爆撃は、エルジア軍司令部の想定以上の戦果を挙げ、また民間人に被害が一切もでなかったという、予想以上の凄まじいものであった。

エルジアは、先の報復攻撃を受け、エルジアの無人機による"クリーンなピンポイント爆撃"と、オーシアの"民間人を巻き込んだ爆撃"とを比較し、繰り返し繰り返し世界に向けて発信しつづけた。

ここで、エルジアが宣伝戦に担ぎ出したのは、エルジア王国王女コゼットである。

彼女はいわば広告塔としてその役割を遂行する。

前述のオーシアによる、軌道エレベータ建設周りの搾取体制、各地駐屯軍における武力による恫喝的支配などを槍玉に挙げ、国際社会へと「オーシアの非道」を訴え、自分たちの戦争のクリーンさと対象し、自分達に理があると宣言する。

これにより、国際世論はエルジアに同調していく。

何しろ、中立国や友好国であっても、オーシア軍が行ってきた威圧的な軍事演習は怖かったし、嫌だと思うものも少なくなかったからだ。

実はオーシア軍は、ユージア大陸中からほんのり嫌われていた事実がここに来て表面化し始めている。

オーシア側の将兵は、これらを受けて「自分らの正義に非があるのでは」と士気が低下していく。

対して、エルジアの士気は旺盛となる。

また、エルジア軍部の日和見主義者達は、タカ派である戦争推進派へと傾き、対して、ハト派である保守主義者達は黙るほかに無かった。

この過程で、エルジア軍部内において、急進派(ERU RADICAL)と呼ばれる若手将校からなる過激派が、急速に発言権を得るようになっていく。

世論を利用して、軍部内での政治をコントロールし、エルジア内部は完全な戦争態勢へと移行する。

エルジアにおいての戦争遂行の為の前戯は、ここに来てその全てが達成されたと言っていい。

対して、機先を制されてしまったオーシアそしてIUNは、それを行えないままでいる。

以降、約半年に渡って繰り広げれる事となる灯台戦争はこうして口火を切ったのだった。

 

まとめ・考察・妄想

灯台戦争とは何か

灯台戦争とは、エルジア王国が「オーシアからの支配搾取からの脱却」と言う、オーシア視点からみれば、言い掛かりにも等しい理由でおっ始めた戦争である。

エルジアの本音が「邪魔な大国の連中を大陸から追い出し、奪い取った軌道エレベータアーセナルバードと言った宝の山々で、強い母国を取り戻す」であるのは余りにも明白だ。

よせばいいのに、またもや世界中に喧嘩を吹っかける事になるエルジアは、様々な工夫や努力、その他小賢しいアレコレによって、世界最強の海洋覇権国家オーシア相手に意外にも善戦する。

だがしかし、本項では割愛がするのだが、IFFの偽装や商船コンテナに火器満載の兵器を仕込むなど、やってる事はかなり汚い。と言うか戦争犯罪じゃねえのかコレ、後年問題にならんのかねコレ*6

対して、オーシアはオーシアでもキナ臭い。

恒久的なエネルギー政策と評して、せっかく作り上げた軌道エレベーターを叩き折る計画を立てたり、自分らの兵士を捨石の如く使った懲罰部隊を編成したりと、その行いは段々となりふり構ってなさが見えてくる。

というか戦局やアーセナルバード周りの事情抜きにしても、軌道エレベータをエルジアに取られまいとする、その御執心っぷりはなんだか凄いものがあるように見えなくも無い。

まあ要はどっちの国もやってる事はとにかく汚いし、欲の皮の突っ張った戦争だと思う。

 

 

ナショナリズムを感じられない戦争

今作の戦争では、過去作の幾つかにおいて感じられた愛国心というか、俺救国の英雄やん?的なナショナリズムを感じられないという特徴がある。

今までは、架空国家や超国家組織(ISAFやらオーシア×ユークの新艦隊)のスーパーヒーローとなってヨイショされるのが、エスコンシリーズのお約束みたいなものだった。

少なくとも、自分の陣営に対しての一種の連帯感や帰属意識を感じたり、それによって気持ちよくなれる瞬間があった気がする。

しかし今作では、一応は最後までオーシア軍に与していたはずにも関わらず「御国のためにやったる」と、オーシアに対する愛を全く感じられなかった。

つまり「うおおおお帰ってきたぞグレースメリア!!天使とダンスだ!!!」と言った「御国のヒーローなんやぞ俺は」的なカタルシスが今作マジで全く無い。

「自分達の所属する組織である、オーシアやIUNへの帰属意識をまるで感じる事ができなかった」。

おそらくこれは意図的なもので(多分)、今作は前述の汚い戦法をはじめとして、国やお上に対して終始モヤモヤさせられるように作られているのだ。

まず、ゲーム中所属部隊が変わりまくるってのもあるし、作戦遂行計画その全容がトリガーの視点では全く見えないのもデカい。

メイジやら懲罰部隊やらにぶち込まれている間は、意味不明な作戦ばかりだし、作戦の真意は読めない。上の連中も信用できないし。

加えて、勢力図では最初の13個くらいの任務をこなしても、戦線が東にも西にも全く動いてくれない。体感的にはかなり不毛でもあるのだ。

オーシア軍の戦略目標が「軌道エレベータ取り返せば戦争終わりや」とほざいていたと思いきや、トリガーが正規軍に舞い戻った時には気付けば「敵首都ファーバンティこそが最終目標!攻め落とさねばならぬ!」になっていたりもする。

トリガーとしてはもう訳がわからない。

 

そもそも、ぶっちゃけた話、この戦争はオーシアの一国民(一兵士)からすれば正直勝とうが負けようが、軌道エレベータがエルジアに占領されようがされまいが、割とどうでもいい戦争だったりする。

何故ならこの戦争の本質は、他所の大陸他所の国で起きた「お上達による軌道エレベーターを巡る利権争い」に過ぎないからだ。

過去作の様に「地元の街に爆弾を落とされた許さねえ」とか、「首都に核兵器が降ってくるからヤベェ」とか「(相棒の)家族が待っとる首都を取り返す」とかとは訳が違う。

現場のトリガー一個人の利害と、戦争の勝敗が全くと言っていいほどにリンクしていない。

だから戦争で勝っても負けても兵には直接的には得がないから、何としてでもエルジアをやっつけたいと意気込む軍上層部と、それに振り回される現場では温度差が生じてしまう。

敵国の戦争理由にも多少は同情できないこともないし、前述の母国への不信感もあるから、自陣営との一体感を味わうとかができないのだ。

某懲罰部隊員に言わせれば「何故こんなクソな戦争があるのか。それは国なんてものがあるからだ」らしいが、たしかに灯台戦争それ自体は国と国との利権争いが原因、それらの欲のせいで生じており、彼の意見は正しくはある様な気がする*7

 

これからのユージア

ここから始まる半年間の戦争、そしてその後に展開される事となる大陸全土を巻き込んで多発する小規模紛争など、これからのユージア大陸は混乱期へと突入する事になる。

それらのゴタゴタが解決した後、2040年を舞台としたエースコンバット3においても、代わりにユージアは別の悩みのタネを抱えているようだ。

そこでは企業という組織が幅を利かせるようになっており、国が肩身の狭い思いをしている。

2040年において、国家という組織は弱体化しはじめていたのであった。

 

エースコンバット7、2019年、灯台戦争はそれらエースコンバット3の前段階に当たる出来事である。

大陸には無政府主義者が台頭し、国家の落日が近づいている。

ストレンジリアルワールドはとんでもない時代へと片足を突っ込み始めている。

灯台戦争は国家という枠組みが消えていく、その兆候が見えはじめる、そんな戦争であったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。

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「俺こそが独立飛行中隊”スリーストライクス”だ。」デキるパイロットは背中(尾翼)で語る。最終作戦を控えた三本戦”トリガー”。



戦争序盤戦はこちら

 

 

*1:一応、エルジアも過去には、「ユージア大陸全域の軍隊を統合してめっちゃ強い軍隊を作ろう」とか言うトンデモ同盟には参加出来ていた。つまりはユージア大陸内でそこそこうまくやっていた時期もあったのである。たぶん。一応

*2:西の大国オーシアと東の軍事大国ユークトバニアによる、2010年に行われためっさ凄い規模のヤバい戦争。両大国は、弾道ミサイルを連射するなんかスゴい潜水艦、宇宙からレーザー攻撃してくる妙な飛行機を繰り出して殴り合い、無意味にも屍の山を築きあげていた。しかし、散々殺しあった彼らは突如として「この戦争を仕組んだのは、実はとある民族の陰謀なんだぜ!」と陰謀論に気づき出し、謎の意気投合をし始める。まあ実際その陰謀論は正しかった訳ではあるが。結局全ての黒幕である悪いベルカ人達はそれはもうボコボコにされて、何の意味があったんだかよくわからない戦争は終結するのであった。ちなみに本戦争後、オーシア人は、環太平洋戦争を終結へと導いた英雄的大統領ビンセントハーリングの行いに感化され、謎のヒーロー願望を夢想しはじめる。別に誰も頼んでいないのに世界平和と融和を希求し、それらを広める為に何やら世界中に軍隊を派遣して回る様になったのである。灯台戦争はそんなオーシア人民の思い上がりの果てに存在するような戦争らしいが、平和だとか何だとかは単に建前であるだけだと思うよ。

*3:そもそもオーシアは、1990年代にも「スプリング海条約」に端を発した「ユージア大陸紛争」の遠因を作っている。また、それによってユージア大陸民の悲願だった統一国家構想は瓦解させるなど、度々ユージア大陸に悪影響を及ぼしているのだ。軍の駐屯云々を抜きにしても、ユージアの人々のうちにオーシアを嫌うものが居てもおかしくは無く、この時点でオーシアが嫌われる下地自体は既に出来上がっていた。まあこれ3Dの話だから正史かどうかわかんないだけどね

*4:初期投資によって発生する将来にわたっての金利をさしているのだろうか。だとしても、今まではオーシア国民の多大なる血税のペイによって復興支援が為されていた訳で、ペイアウトを得られる仕組みを作ったとして、それを責めるのは筋違いだと思われるが、ここら辺は明確に描かれている訳では無いから妄想の域に過ぎず、詳しい事はわからない。

*5:尚、これらの攻撃によって、オーシア海軍も尋常では無いくらいの打撃を食らっている。そしてそれは見事に果たされた。

宣戦布告直後の攻撃により、IUN国際停戦監視軍の稼働空母は"空母ケストレルⅡ"、"空母ヴァルチャー"の二隻のみになってしまった。

また、オーシア大陸からユージア大陸東部へのIUN国際停戦監視軍に援軍を送ろうにも、そのルートは後述する、無人機警戒網によって閉じられてしまっている。

一応、開戦直後ではザップランド航空基地に向けて船舶に航空機(モスボール)を詰めての輸送など、航空戦力(機材)の輸送が出来た例もあったのだが、しかしそれはエルジア海軍が海運ルートを抑えれたとすれば不可能になってしまう((エルジアが実際に商船破壊やら輸送船団に対する攻撃を行っていたかどうかはぶっちゃけ不明であるが、セオリーとしてやった方が良い。ACES at WARによれば「オーシアは海を渡る術を失った」と明記されている事からも、オーシアは戦争中にどこかのタイミングで、海運による援軍を断念せざるを得ない状況へと追いやられたようなのだ。エルジアの空母機動部隊や多数の航空及び海軍戦力が襲い掛かったとすれば、空母や護衛機を持たないオーシア輸送船団は、大変なことになってしまうのが予想されうる。尚、戦争中盤の漁師作戦にて、オーシア艦隊がアリコーンとの殴り合いを演じている頃には、化物鳥の片割れはぶっ壊れており、加えてエルジア空母打撃群がボコボコにされているが為に、オーシア本国から数個小艦隊が海を渡ってきていた。

*6:ストレンジリアルと現実は違うので、エスコンワールドでは別に商船が空母化するのも問題ないかもしれないし、IFFを偽装しまくっても罪に問われないのかもしれない。でもそうすると敵味方IFF偽装合戦で偉いことになるような。勝てば官軍と言うしエルジアは戦争勝利しこれらの行為を有耶無耶にして終わらすつもりだったのかもしれない。

*7:ただし、ストレンジリアルワールドでは、国が無くなったとしても、他の枠組みによって戦争は続けられていく(企業間紛争)のだが。